硫カドミウム鉱(Greenockite)


Santa Cruz Mine, Poopo, Oruro, Bolivia
CdS
画像幅 6mm

硫カドミウム鉱はカドミウムと硫黄が化合した、カドミウム鉱物の代表的鉱物である。カドミウムを主成分とした鉱物は珍しい。
硫カドミウム鉱は「カドミウムイエロー」という黄色い顔料と同じ成分で、したがって特有の鮮やかな黄色をしていることが多い。しかし、それは粉末状であるときの話で、この標本のように結晶が肉眼的サイズとなると、色は暗赤色となる。お陰でかえって毒々しい色を呈しているが。
カドミウムは亜鉛と同族ゆえ化学的性質が似ているので、亜鉛鉱物には必ずカドミウムが含まれている。例えば閃亜鉛鉱には最大で5%ほどカドミウムが含まれている。この微量に含まれているカドミウムが、亜鉛鉱物の風化に伴って分離、集積して出来たのが硫カドミウム鉱である。この標本も閃亜鉛鉱の塊の表面に生じている。ちなみにカドミウムが発見されたのは菱亜鉛鉱からである。

硫カドミウム鉱は方硫カドミウム鉱(Hawleyite)と同質異像関係にある。問題なのは、硫カドミウム鉱と方硫カドミウム鉱がどちらも黄色い粉末で産出することが多く、肉眼的な区別が不可能なことである。どうしてもラベルの記載と実際の鉱物に齟齬が発生しやすく、両方混じっている場合もあるから質が悪い。方硫カドミウム鉱が肉眼的結晶をしている、という話は聞いたことが無いので、おそらく赤色の硫化カドミウムは硫カドミウム鉱と見て間違いはないと思うが。
硫カドミウム鉱の組成を見ると閃亜鉛鉱との関連がありそうだが、硫カドミウム鉱と構造が同じなのは同質異像のウルツ鉱(Wurtzite)の方である。方硫カドミウム鉱は、「方」というだけあって閃亜鉛鉱と同じ構造である。

産地のPoopoには、13世紀から既に金属鉱物の採掘を行っていたとされる。近くにあるPoopo湖は、岩盤中に存在するカドミウムなどの重金属が自然な風化、または鉱山から流出する酸などで溶け出して、湖に溶け込まれている。大半は湖底に堆積しているが、それでもカドミウム、砒素、鉛の量は飲料水としての基準値を上回っているという。

日本人が「カドミウム」と聞くと、やはり思いつくはイタイイタイ病やその毒性であろう。先述の通りカドミウムは亜鉛と性質が似ているため、生体に必須の亜鉛と間違えてカドミウムを取り込んでしまうのである。しかし、カドミウムは今でも黄色顔料(カドミウムイエロー)、ウッドメタル(低融点合金)、原子炉の制御棒として重要である。また今はリチウムイオン電池に取って代わられてしまったが、かつての二次電池(充電池)の代表格はニッカド電池(負極に水酸化カドミウム)であった。

肉眼的結晶が殆ど無いのであまり知られていないが、実は両極の形が違う異極晶である。

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