自然イリジウム(Iridium)


Newjansk, Ekaterinburg, Ural, Russia
(Ir0.52,Os0.35,Ru0.10,Fe0.03)
平均の大きさ 1mm

写真中の微粒が自然イリジウムである。ラベルが無ければただの金属カスでしかない。

イリジウムは「白金族元素」というグループの元素の1つで、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の6種類で構成されている。どの元素も貴金属で、比重が大きく(前者3種類は12以上、後者3種類は21以上)、酸や塩基に侵されにくいなど、化学的性質が似ている。特に比重に関しては、オスミウムとイリジウムは元素のナンバー1と2であり、必然的に鉱物の中でも一番重い鉱物となる。
天然では化合物の形で産出することはほとんどなく、大半はこの標本のように単体の砂鉱として産出する。化学的性質が似ているので、どれか1種類の元素に偏るよりも、数種類の合金状態で産出する場合が多い。また、鉄とも性質が似ているので、最大で1割程度の鉄を含む。鉄の量が多いほど黒っぽくなり、磁石に引き寄せられる。

この標本は下記の分析結果の通り、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、鉄を含む。モル比でもっとも多く含まれる元素が名前となるため、この標本の場合イリジウムがもっとも多いため、「自然イリジウム」という名前がつく。かつてはこのような鉱物には「オスミリジウム(Osmiridium)」または「ルテノスミリジウム(Ruthenosmiridium)」という名前がつけられていたが、現在では俗称として残るのみである。ちなみに、ルテノスミリジウムはルテノイリドスミン(Rutheniridosmine)と混同されがちだが、ルテノイリドスミンは独立種で結晶形も異なる。

イリジウムはきわめて反応性が低く、通常の酸では溶けない貴金属をも溶かす王水にすら、粉末にしても僅かに溶けるのみである。ただし、金属特有の展性・延性がなく、硬くて加工しにくい(硬度6.5)。そのため、その耐摩耗性と化学的不活性さを利用して、万年筆の先に使われることが多い。そのほか、工業用のるつぼに使われることもあるが、イリジウム自体の希少性とあいまって高価である。また、SI単位系で現在も使われている唯一の原器「国際キログラム原器」は白金とイリジウムの合金である。

なお、万年筆の先端を「プラチナ」と表記することがあるが、実際の先端はイリジウムである場合が多い。「イリジウム」と表記しないのは、プラチナの方が知名度があるからであろう。
元素 割合(原子比)
イリジウム(Ir) 52.27%
オスミウム(Os) 34.72%
ルテニウム(Ru) 10.46%
鉄(Fe) 02.55%

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