イソ鉄白金(Isoferroplatinum)


Fox Gulch, Salmon Rivier-Red Mountain District, Araska, U.S.A.
Pt3Fe
標本幅 4mm

鉱物の世界は、あえて正確性を犠牲にして、別の名前で表記するということもある。それは大抵標本を販売する側の都合から来ている。イソ鉄白金は、その典型例のようなものである。

イソ鉄白金は、白金と鉄の合金鉱物である。和名は「自然方鉄白金」と訳す文献もある。パラジウム、銅など、他の性質の似通った元素も含んでいる。写真の標本は、全体がイソ鉄白金であり、一部は金属光沢が見えている。

「自然白金(Platium)」と表記されている標本の8割は、このイソ鉄白金であり、残りの2割の殆どは「テトラ鉄白金(Tetraferroplatinum)」という、別の白金と鉄の合金鉱物であると言われている。本当の自然白金は、ほんの数パーセントに過ぎない。本当の自然白金は、バクテリアの作用で鉄分が溶け出した場合に生ずるとも言われている。

ではなぜイソ鉄白金は「自然白金」と表記されるのか。これには3つの理由があると考えられる。
まず、「Isoferroplatium」という名称が難しすぎること。「自然白金(Platium)」と表記すれば、高級な貴金属である「プラチナ」がすぐに思いつくだろうが、「イソ鉄白金(Isoferroplatium)」ではピンと来る人も少ないであろう。
また、見かけには「鉄分の多い自然白金」と見かけの差はなく、結晶系も同じ等軸晶系である。また、イソ鉄白金と自然白金を区別するには分析にかけてみるしかなく、肉眼的には判別不能である。
そして、白金族元素の合金鉱物は種類が多く、同じ砂鉱の中でも数種類混じっていることが多い。そのため、白金族元素の鉱物は難しく、細かい種類にいちいちこだわる人はあまりいないのである。
こういった理由から、「イソ鉄白金」という名称は殆ど見かけられなく、多くの書籍やサイトでも「自然白金」と表記されているのである。

鉱物一覧へ戻る

英名順一覧へ戻る

TOPへ戻る

inserted by FC2 system