糸魚川石(Itoigawaite)


新潟県糸魚川市青海(原産地)
SrAl2Si2O7(OH)2・H2O
標本幅 2mm

糸魚川石は、ストロンチウムを含む珪酸塩鉱物で、翡翠の産地として知られる糸魚川で発見された新鉱物である。この産地で1999年に発見された。
糸魚川石はローソン石(Lawsonite)のストロンチウム置換体に相当する鉱物で、Ca-Srサイトの殆どをストロンチウムが占めているという。翡翠輝石(Jadeite)中でも目立つ青色の原因は、微量に含まれるチタンや鉄によるものだとされている。この点はオンファス輝石(Omphacite)と似ている。
糸魚川石は、翡翠輝石中に2〜3mmの幅を持つ脈として産出する。翡翠輝石は、その脈にそって割れやすくなっており、断面から見ると面に広がって分布しているように見える。

糸魚川石は、2つの理由から見逃されてきた鉱物である。ひとつは、分析したときに珪素と重なったストロンチウムのピークを見逃したこと、もうひとつは、青い翡翠であると思い込まれていたことである。思い込みとは恐ろしいもので、翡翠を削っていた人は、昔から「青い部分は柔らかくて削れ易く、変だ」と思っていたらしいが、特に分析もされずに見逃されてきたのである。よく見られるものに注意を払う例としては最もよく取り上げられる。

糸魚川石にまつわるエピソードはほかにもあり、当初、産地は糸魚川市小滝川とされいたものが、後の調査で青海町親不知海岸であることが分かったのである。となると、名前は別のものにされるべきであるが、すでに論文が提出されていて、今更名前を変更するために論文を提出しなおすわけには行かなかったのである。
なお、青海町は2005年に糸魚川市、能生町と合併して新たな糸魚川市となったため、上記の問題は解決されたと言えなくもない。

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