黒辰砂(Metacinnabar)


三重県多気郡伊勢和村丹生
HgS
画像幅 10mm

画像に多数確認できる黒色の結晶が黒辰砂である。「メタ辰砂」とも呼ばれる。
黒辰砂は辰砂(Cinnabar)と同質異像で、344℃を境に、それ以上の温度ならば黒辰砂、それ以下の温度なら辰砂が生成される。それならば、全ての黒辰砂は常温では辰砂に入れ替わっているはずである。実際、黒辰砂と辰砂が混ざり合っている標本もあれば、黒辰砂の仮晶を持つ辰砂もある。そうならないのは、セレンや亜鉛など、別の元素が混入している影響で黒辰砂から辰砂への変化が抑制されているせいと言われている。いずれにしても、黒辰砂は辰砂より少ない。

丹生は良質の黒辰砂の結晶を産出したことで有名である。丹生地域の水銀の産出の歴史は古く、一説には713年頃に本格的な採掘がはじまったと言われている。ここの地域で産出した水銀は主に東大寺にある大仏に金メッキを施すための「アマルガム(水銀との合金)」としての用途として使用されたといわれている。そのとき使用された水銀の総量は2400kgとも言われ、発生した大量の水銀蒸気での汚染が原因で、都が奈良から京都に移ったとする説がある。丹生は1973年に完全に閉山し、1000年以上の歴史に幕を閉じた。

ちなみに、辰砂やそれを含む水銀の鉱石は、日本では古来「丹」と呼ばれ、「丹生」のように水銀の産出する場所ではこの名を冠した場所もある。

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