トルトベイト石(Thortveitite)


京都府京丹後市峰山町大呂磯砂鉱山
(Sc,Y)2Si2O7
結晶長さ 1mm

写真中央の柱状結晶がトルトベイト石である。
スカンジウムを含む大変珍しい鉱物で、日本ではほんの僅か産出したのみである。磯砂鉱山では長石中に数mm〜数cmの結晶が産出した。スカンジウムを含む鉱物自体、14種類ほどが報告されているに過ぎず、日本で産出するスカンジウム鉱物はトルトベイト石とバツィ石(Bazzite)の2種類のみである。
磯砂鉱山は珪石を採掘した鉱山だが、あまりにも採算が合わなかったので「鉱山」だったのは1977年からの僅か2年間。資金を出しても誰も儲からないので、地元の人は「金掘り山」ならぬ「金ほうり山」と呼んでいたようだ。
日本では希元素鉱物の人気は高いので、国産のトルトベイト石の入手は非常に困難になっている。昔はこの産地の標本をめぐって盗難事件もあったそうだ。
この標本は始めは結晶を輪切りにした断面に向かって矢印がついていたため、そっちの標本かと思ったが、じっくり観察した結果、それほど風化の進んでいない立派な結晶が見つかった。長さ1mmと小さいが、立派な結晶である。

スカンジウムは極めて珍しい上に反応性が高いため、用途を求める研究がなかなか進まなかった。しかし最近では水銀灯の光を強くするための用途や、アルミニウム合金への添加、ニッケルアルカリ蓄電池の陽極への添加など、工業的に重要となっている。

ちなみに有名な温泉、草津温泉の万代源泉が流れる湯川には1トンあたり17mgのスカンジウムが含まれている。つい最近、日本原子力研究開発機構などがスカンジウムを回収することに成功している。

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