レニウム鉱(Rheniite)


北海道根室支庁択捉島蘂取郡蘂取村茂世路岳(原産地)
Kudriavy Volcano, Iturup Island, Kuril Islands, Sakhalinskaya Oblast', Far-Eastern Region, Russia(原産地)

ReS2
標本幅 0.5mm

北方四島の領土問題は日本人なら誰でも知ってるであろうが、レニウム鉱の発見は、間違いなくこの問題をややこしくしている。

レニウム鉱は、レニウムの二硫化鉱物で、この産地で1999年に発見された。しかし、通常の公表の手順を介さなかったため、鉱物種として認められたのは2004年である。レニウムを主成分として含む鉱物はほかにタキアン鉱(Tarkianite)しか発見されていない。

火山の酸性の、およそ500〜570℃の噴気から晶出する鉱物で、強い金属光沢の板状結晶として産出する。その見かけは輝水鉛鉱(Molybdenite)そっくりである。

レニウムは極めて希少な元素であり、レニウム自体、非放射性元素では最も遅い、1925年に発見されたものである。1908年に小川正孝が43番元素としてニッポニウムを報告した際、資料が実はレニウムであったことは有名な話である。タングステンとの合金として有用な元素であるが、極めて存在量が少ないため、文字通り「山のような岩石」を処理しなければならなかった。それが、75%のレニウムを含む鉱物が発見されたとなれば大騒ぎである。領土的に微妙な場所で発見されたといい、ニッポニウムの件といい、日本はレニウムにとことん嫌われているらしい。

二硫化レニウムはおよそ1000℃でレニウムの単体に分解するので、高温環境があれば自然レニウムが発見されるかもしれない。昔は自然レニウムが鉱物種として登録されていたが、あれは白金を主成分とする合金であることが確認され、1976年に登録が取り消されている。

尚、産地表記に関しては『9.「Kudriavy Volcano」と「茂世路岳」』に詳しい。

ちなみに、レニウムはインジウムと共に、天然に存在する放射性同位体が安定同位体より多い珍しい元素である。37.4%を占める185Reと、62.6%を占める187Reのうち、187Reが412億年の半減期を持つ放射性同位体である。即ち、1gのレニウムは約10757Bqの放射能を持つ。

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